第79話 どうすれば信頼できるのか?
「信用していたのに裏切られた」
社員の行動に対して、このような思いに駆られたことはないでしょうか。だからと言って、金輪際、社員を信用しないことができるのでしょうか。それは、恐らく無理でしょう。
人が、一人でできることには限りがあります。互いに協力しなければ、成し遂げられないことの方が多いのです。
例えば、給与計算を社長がやっている会社があるとします。会社の規模が小さいうちはそれでも良いでしょう。しかし、いつまでも社長が給与計算をしている会社は大きくなりません。
いつかは、社員に渡すなり、アウトソーシングするなりしなければなりません。その時には、社長の手を離れるわけですから、相手を信じなければできませんよね。
過去に、社員に裏切られたことがあるからと言って、いつまでも社長が抱えていれば会社は発展しないでしょう。とはいえ、誰彼かまわず信用するというのも考えものですよね。
事前に、信用していい相手と、そうでない相手が分かれば苦労は要りません。そんなうまい方法があるのでしょうか。
ゲーム理論の「囚人のジレンマ」での実験があります。それによると、「渡る世間に鬼はない」と考える高信頼者と、「人を見たら泥棒と思え」と考える低信頼者では、前者の方が相手の出方を正確に予測していました。
これは、単に高信頼者が、誰でも信用してしまうお人好しではないことを示しています。つまり、高信頼者は、観察力が鋭く、修正能力も高いのです。
これに対して、低信頼者は、そもそも相手のことを信用していないところからスタートしますので、「おかしいな」と思ってもあまり評価を変えようとはしませんでした。高信頼者は、観察していて「おかしいな」と思ったら柔軟に評価を変えることができたのです。
このことから、裏切られるであろうリスクはありますが、まずは相手と協力しようという姿勢こそが大切なことが分かります。
そこには、多少の失敗もあるでしょう。しかし、社員との関係を前向きに捉えるなら、少々の失敗は気にせずに、社員との協力関係を構築する方が、良い結果をもたらすのではないでしょうか。
まずは、社員を信用してみましょう。それが、信頼できるかどうかをうまく見極められるようになる第一歩です。