第11話 部門の壁を取り払うには?

 「部門間の連携がうまく行かなくて…」

 と、嘆く社長さんがいらっしゃいます。例えば、営業と製造の部門があるとしましょう。仲が悪いとは言わないまでも、それぞれの部門が自らの利益を優先しようとすると、うまく仕事が回らなくなることがあります。原因の一つは、自分の所属する部門に愛着があるとか、帰属意識があることによります。つまり、自分が所属している部門をひいきすることで、所属していない部門とはっきり区別しています。

 以下は、「新版きけわだつみのこえ」からの抜粋です。『日本人の死は日本人だけが悲しむ。外国人の死は外国人のみが悲しむ。どうしてこうなければならぬのであろうか。なぜ人間は人間で共に悲しみ喜ぶようにならないのか』民族性による帰属意識をよく表していると思います。このような広い意味での集団への帰属意識は、単にその集団に所属しているだけで芽生えてきます。サッカーのワールドカップや野球のWBCが盛り上がるのもうなずけますね。誰もが、所属している人の顔も名前も知らないのに、同じ日本人だから、同じ男性だからという理由だけで親しみがわくというご経験をされたことがあるでしょう。

 しかし、現実には冒頭で述べたように「部門の壁」という問題があります。同じ会社の社員という点では他の会社の人を明確に差別しますが、社員にとってより身近となる社内の所属部門ともなれば帰属意識はさらに強固なものとなります。言い換えれば、営業部門とか、製造部門とかへの帰属意識が顕著になればなるほど、部門の帰属意識が会社全体のそれよりも優先することになります。したがって、部門の壁という問題が生じるのです。

 これを放置しておくと、会社全体の利益よりも、自分が所属する部門の利益を優先するようになってしまいます。そうすることで、自分の所属する部門は利益を得ても、会社全体としての利益が阻害されてしまいます。競うべき相手を間違えていますよね。

 そこで、部門の壁を取り払わないと、結局は会社にマイナスの影響を与えてしまうことを理解させる必要があります。これに必要な事が、会社全体の一体感を作るということです。とりわけ、今どきの若い人は一体感を望んでいると言われています。

 一体感を作るための施策は、いろいろ考えられますが、最も重要なのがビジョンを共有することです。ビジョンが共有できれば、共通の行動様式が生まれます。そして、行動様式に沿って行動することで、会社全体の利益に配慮した行動が取れるようになるのです。

※今回は、社会的アイデンティティ理論のお話です。

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