第18話 部下から認められるには?

 「この人にだけは評価されたくない」

 部下から、このような不満の声が聞こえてくることがあります。これを聞いた評価者である上司は、ガツンと頭をなぐられたようなショックを受けるのではないでしょうか。

 このように、人事評価に不満があるという場合、評価制度に不満があると思いきや、評価者への不満が圧倒的に多いのです。逆に言えば、評価者を代えるか、評価者を育成するなどしないと、部下の人事評価に対する納得は得られないことになります。つまり、評価制度がうまくいかないからといって、最初に制度を変更したとしてもダメだということです。

 上司と部下との関係は深刻な問題をはらんでいます。

 例えば、厚生労働省が公表した「平成19年労働者健康状況調査結果の概況」を見ると仕事でのストレスの具体的な内容が示されています。それによると「職場の人間関係の問題」が最も高く、「仕事の質の問題」「仕事の量の問題」の順になっています。

 職場の人間関係の問題は、労災の精神障害を認定する基準に反映されています。この基準は、ストレスの強度を「弱」「中」「強」の三段階に設定しています。対人関係の項目は、上司とのトラブル、同僚とのトラブル、部下とのトラブルに分けられていて、いずれも「中」となっています。

 ただし、時代の変化に伴って、認定基準はしばしば変更されています。前述した三つのトラブルのうち、最初から「中」に設定されていたのは上司とのトラブルだけで他は「弱」でした。裏返せば、時代が変わっても、部下にとって上司は大きなストレスを生む原因なのでしょう。

 一方で、上司は、晩婚化の影響で管理職に登用されても子どもが小さく、家族に気を遣って仕事をするという生活に様変わりしています。また、一般職が残業を抑制されたことで、上司の実質的な労働時間数は増えました。このことから、社内で最も疲弊しているのは上司であると考えられます。

 加えて、自分が評価した部下から冒頭の言葉を聞かされた時のダメージはかなりのものでしょう。

 少なくとも、評価した部下から認められるためには、どうしたらいいのでしょうか。一つは、部下の仕事をどれだけ理解しているかでしょう。それには、コミュニケーションが欠かせません。

 ただし、単にコミュニケーションを増やせば良いというものではありません。社員全員が拠りどころとする会社の価値観を共有することで、どのような行動が評価を高めるかを伝えていくことが大事です。

 社員の力を引き出して成果を出すためのキーマンは上司なのです。

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