第74話 なぜ人事制度は社長の右腕になるのか?
「社員が思うように動いてくれない」
こう言って嘆く方がいらっしゃいます。この場合、社員の劇的な変化を期待していることが多いように感じます。しかし、それは無理です。
他人は変えられません。自らコントロールできるのは、自分だけです。
例えば、ご自分がダイエットする時のことを考えてみましょう。ダイエットをしようと思えば、自分で食事制限をするとか、自分で運動をしますよね。その結果、自分の身体に変化が起きます。
ダイエットが成功するかどうかは、自分に掛かっています。あなたが運動をしたことによって、あなたの配偶者が痩せることなどありません。あるいは、あなたが運動を止めたことによって、あなたの配偶者がリバウンドすることもないわけです。
これを因果関係と言います。
人は、誰でも自己中心的であり、自尊心があります。したがって、いつも自分の考えや行動が正しいと思っています。
それなのに、他人から「変われ」と言われて、変わるものではありません。一時的には、変われるかもしれませんが持続できません。
社員の行動を変えようと思えば、まず自分が変わらなくてはいけないのです。社員が自動的に変化することなどないのです。この認識を持つことからはじめてください。
多くの場合、社員との接し方を変えることになるでしょう。例えば、頭ごなしに叱るのではなく、社員の話にも耳を傾けるようにします。この態度を継続すれば、社員もあなたの変化に気づくことができます。すると、あなたとの認識のズレも明確になりますから、そこをどのように埋めていくかを話し合うことができるようになります。
このように、あなたが変わることで、社員の自尊心を保ちながら、社員が変化するための土壌ができるのです。これが、社員と上司との信頼関係です。このことは、お客様との関係においても重要ですよね。
このような土壌ができていればこそ、社員はどのような成果を上げると自分が成長できるのか、責任のある仕事を任せてもらえるのかを受け入れやすくなるというものです。
自分がどのようにがんばれば会社に認めてもらえるのか分かるようになります。具体的な課題や修正点がわかれば、社員は自ら修正する力を発揮できるというものです。
この点で、役に立つのが人事制度なのです。だからこそ、人事制度は社長の右腕となり得るのです。