第69話 なぜ、社会保険料の対策が必要なのか?

 「賃金を下げるしかないな」

 これは、今後も会社が負担する社会保険料が上がり続けたらという質問に対するある経営者の方の答えです。平成15年に日本商工会議所が行った調査で、同様の内容を経営者に尋ねたところ、53%と最も多かったのが「賃金の調整を検討する」でした。

 やはり、賃下げを検討せざるを得ないのでしょうか。

 社会保険料の問題は、急速に高齢化が進んだ結果、深刻さが増しています。ご存じのとおり、我が国の社会保険制度は、世代間で扶養するシステムを採用しています。つまり、現役で働いている人たちが保険料を支払い、その保険料が年金として現在の年金受給者に支給されることになります。

 従来は、「胴上げ型」「騎馬戦型」で、複数の若者が一人の高齢者を支える構図でした。ところが、人口構造が変化して、一人の若者が一人の高齢者を支えるという厳しい社会の到来が目前に迫ってきているのです。いわゆる「肩車型」と言われるものです。

 これでは、今後、社会保険料が安くなる余地はありません。

 社会保険料は、労使折半ですから、社員の立場からすると、賃金は増えなくても保険料だけはじりじりと上がっていくことになります。つまり、社会保険料が上がり続けるのは、実質的な賃下げと同じなのです。

 加えて、会社の立場からすれば、社員に支払う賃金を含めて支払額が上昇するのですから、冒頭の経営者の言葉にも頷けます。しかし、社員の賃金に手をつけることは、彼らの生活を圧迫しかねません。

 逆に言えば、そのことで社員のやる気が低下し、生産性が落ちてしまうリスクもあるでしょう。会社の命取りになりかねません。

 このことからも、利益を確保できるような経営が求められています。会社に利益をもたらすのは社員であり、社員以外にはあり得ないのです。ヒト、モノ、カネと言われるゆえんですね。

 団塊の世代が年金の受け手になると、社会保険料のさらなる上昇は避けられません。それまでに、社員のやる気を上げる人事制度の構築や生産性を上げるための仕組みづくりを考えることになります。それは、社員が現場で認識できるものでなければなりません。認識できなければ、改善の見込みもないからです。

 社会保険料の上昇は、経営問題に直結しています。今後は、人件費の扱いにも注意が必要です。

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