第66話 会社が見せなければならないものとは?

 「早く一人前になって欲しい」

 経営者なら誰しも、このように考えていることでしょう。

 一人前というのは、何年かの教育を経て、会社の役に立って欲しいということにほかなりません。つまり、教えれば、会社の要求するレベルまで到達できる可能性がある人を採用していることになります。

 将来のことなので、確実に一人前になるとは限りません。会社の見込み違いであったり、社員の考えている状況と違うということは、よくあることです。その結果、会社にとって期待外れということも少なくありません。

 しかし、そのような場合でも、次に入ってくる社員こそ一人前に育って欲しいと願っているのではないでしょうか。このような状態が繰り返されると、社員は一人前になることなく辞めてしまったり、そうでなくとも生産性が落ちてしまうものです。

 そうならないためには、どうしたら良いのでしょうか。

 一つの手立てとして、採用の精度を上げることが考えられます。採用は、その時点では応募者の質がわからない状態です。言い換えれば、会社としては不確実な買い物なわけです。

 経営者が、社員に一人前になって欲しいと望むのと同じように、「この会社でなら力が出せそうだ」という思いで募集してくるのだと考えられます。これから入ろうという会社に、行くところがないからという理由はあるかもしれませんが、最初からやる気がなくて入ってくるケースは稀でしょう。

 もし、最初から働くつもりがないとか、やる気がないということであれば、人生をムダに生きるのと同じではないでしょうか。これは、応募者にとっても不幸なことです。

 そこで、採用時に、キャリアプランを示すようにします。

 「会社がこの先、○年間増収増益だったとすると、あなたの給料はこのようになりますよ」。「入ったら、○○と△△の仕事を覚えてもらいます」。「○○は通常2年、△△は通常3年で卒業です」。

 キャリアを採用の段階で示すことができれば、応募者としてもイメージができます。少なくとも、入る、入らないの判断が容易にできるようになるでしょう。

 応募者から見ても、会社への入社を決めることは不確実性が高いのです。会社として、採用時に将来のキャリアをコミットメントすることで、不確実性を下げることができるます。経営者にとっても、応募者にとっても、人生をムダにするわけにはいきません。

 社員に将来を見せるのは、経営者の最も大事な仕事だと考えています。それは、将来の社員に対しても同じことです。

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