第64話 生産性を上げる伝え方とは?
「和をもって、貴しとなす」
これは、聖徳太子の十七条憲法に書かれている言葉です。和を重視する。すなわち、個人の利益よりも、集団の利益を重視する性質は、我が国の国民性を表しているとされています。
高度経済成長期は、多くのサラリーマンが個人の利益を犠牲にして会社に協力したからこそ、なし得たという現実もあります。いつしか、日本人は、集団の利益のために行動するというのが常識となっています。
このように、日本には集団主義の文化が根付いていると言われています。本当にそうなのでしょうか。
「信頼」という観点から日本人とアメリカ人を比較した実験では、私たちの常識に反して、日本人の方が個人主義的な行動を取ったとされています。つまり、アメリカ人よりも、集団に対して非協力的な行動を取ったということです。
この実験は、見ず知らずの他人を信頼できるか、それとも用心しなければならないかを調べたものです。逆に言えば、仲間うちから相互に見張られているようなムラ社会では、簡単によそ者を信頼できないということになります。
個人主義だからこそ、認められたいという欲求も強いのではないでしょうか。集団主義の皮をかぶった個人主義なので、認められたいという欲求自体は、なかなか表に出てこないかもしれません。
仕事で認められる、つまり、社員は自分の行動をほめられるとうれしいものです。例えば、結果をほめられるよりも、そこに至ったプロセスをほめられる方が、「見ていてくれる」と思えて、うれしさも倍増するでしょう。
しかし、何の反応もないとなると、行動自体を止めてしまう可能性があります。例えば、昼休みの休憩時間は社内が不在になることから、弁当を持参した社員が自主的に電話番をしてくれるとしましょう。
やがて、それが当たり前となってしまったときに、その社員は不信感を募らせることになります。すると、トラブルに発展してしまうことも考えられます。
したがって、「見ている」ということを伝えることが大事です。伝える方法としては、ほめる、しかるなどが思い浮かびます。
しかし、しかるよりは、ほめる方が、社員をやる気にさせるのではないでしょうか。例えば、営業がまったくできていない社員が、営業先を一つ開拓して上司からほめられたら、もっとがんばろうという気になりますよね。
人は、成長することに喜びを感じるのだと思います。だから、成長したいと望んでいるハズです。
このように考えると、上司がほめることは、仕事への動機づけとして有効です。