第59話 秘密の流出を防ぐためには?

 「研究データが、うちに持ち込まれたようだ」

 この通報から東芝の半導体メモリーを巡るデータ漏えい事件が明らかになりました。漏えい先は、韓国のライバル企業。外国に盗まれる時代が来たということです。東芝に通報したのは、容疑者の男と同じ会社で働く日本人社員でした。

 当時、この会社は半導体メモリーで東芝と激しいシェア争いをしていました。そこへ営業秘密が持ち込まれたのです。東芝は、ライバル企業の技術が急激に向上したとかねてより不審に思っていたとコメントを残しています。

 ややもすれば秘密が漏れることにより競争優位性が損なわれることがあります。したがって、秘密を持ち出されないような自衛手段を講ずる必要があります。ところが、本人の頭の中にある情報まで持出しを防ぐことはできません。

 それでも、秘密保持の誓約書は交わしておくべきです。ただし、すべての社員に対して同じようにするというのではありません。地位や職務内容など、秘密に近い社員に対して誓約書を取ります。

 誓約書は、一般的に入社時に取るという認識があります。この場合の秘密の範囲は、広く浅い内容となっています。要するに、誰がどの程度、秘密にタッチするのか分からないからです。

 したがって、配転やプロジェクトへの参画により、秘密へ触れる機会ができれば、その都度、誓約書を交わすことになります。もちろん、その任から外れれば、その約束は見直されることになるでしょう。

 ですが、誓約書の内容は、約束として守らなければならないことを教えなければなりません。これが一番の防御法になります。

 ところが、退職時には、誓約書を取るのが最も難しくなります。退職時には、競業避止も含めた約束をしたいところですが、職業選択の自由も考えなければなりません。

 冒頭の事件のように、ライバル企業へ行ったほうが、それまでの経験が生かせるからです。逆に言うと、他の会社からの転入者を入れる場合は、不正競争防止法の情報を持っていないかを確認することが大事です。つまり、前職で負っていた秘密の保持義務や競業避止義務の内容を確認しなければならないということです。

 報道によると、事例のライバル企業に情報を流した容疑者は、処遇に不満があって、その腹いせにやったと供述しています。不満を残したまま退職するとトラブルになるリスクが高まります。

 社員の抱えている不満をチェックするということも必要ですね。

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