第58話 社員の不満の先にあるものとは?

 「残業代が支払われない」

 このような理由で、会社が訴えられる例が後を絶ちません。いわゆる未払残業代の請求と言われるものです。

 この場合、請求してくる人というのは、退職した方か、もしくは退職間際の方が殆どです。つまり、会社との関係が切れてしまった人からの請求が圧倒的に多いということになります。これは、取りも直さず、在職中は請求しづらいことを表しています。

 多くの社員は、「会社とお客さんのために働いている」という意識でしょう。残業代が支払われないからといって、会社やお客さんから頼られれば、おいそれと辞めるわけにもいきません。

 しかし、不満は確実に蓄積されていくのです。そして、退職を目の前にして、未払の残業代を取り戻そうと決意するのです。

 これを防ぐには、社員に不満を貯めさせないようにすることです。そのための施策は、いろいろ考えられますが、根本的には労働時間を削減しなければ解決しないでしょう。

 長時間労働は、精神健康を害することが広く知られています。なので、長時間労働が続いていると、それだけで労災リスクは高まります。

 例えば、労災を判断する際のストレス評価の程度を押し上げてしまいます。すると、労災になりやすくなってしまいます。労災と認定されるということは、会社に責任があると認められるのと同義です。

 そこで、労働時間を減らすには、年次有給休暇を利用するのも一法です。年次有給休暇は、法律で決められた社員の権利です。これを社員に使ってもらうことで、健康的な働き方ができるようになります。

 なぜなら、年次有給休暇を取った日の労働時間は、働いた実数にカウントされません。逆に、休日労働は、働いた実数にプラスされてしまいます。これが、労働安全衛生法に規定されている健康労働時間の考え方になります。

 これまでは、年次有給休暇は権利としてあっても使いにくいものでした。それは、配置人員によるところが大きいです。我が国では、雇用を保障するために実質上、解雇を不自由にしています。おいそれと解雇できないのは、そのためです。

 このことから、不況が来ても解雇しなくて済むように、本来の人数よりも少ない人数で仕事を回すようにしています。つまり、多くの会社では配置人員が不足している状態が適正配置なのです。

 例えば、10人でやるべき仕事を7人で回す職場だとしましょう。忙しい時は残業でカバーします。そこへ1人が年次有給休暇を取ろうとすると、そのシワ寄せが同僚にいってしまうことになります。この打開策として、計画的に利用させるようにします。

 今後は、年次有給休暇を活用して労働時間を削減し、社員の疲労とストレスを和らげるようにしなければなりません。そのためには、年次有給休暇を与えても良いと思えるくらいの仕事ぶりの人を選別して入れるということが大事です。

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