第56話 社員が退職時に持ち出すものとは?

 「こんなことなら、退職前に教えてもらえばよかった」

 ベテランの社員が退職したことによって、技術等の知的資産が失われるということはままあるのではないでしょうか。

 例えば、職人技の溶接技術、経験に基づく調合法あるいは国家資格や免許だったりと、その人が持っている固有のものです。当然ながら、その人が退職すれば、その人とともに会社から無くなってしまいます。

 会社から無くなってしまえば、仕事に活用できなくなってしまいます。消えてしまった技術等で事業を差別化していたとしたら、それもできなくなってしまいます。

 悪くすれば、会社の経営が窮地に陥ってしまうでしょう。そうならないように、知的資産を次世代に承継できるようにしておくべきです。

 それには、まず、どんな知的資産があるかを把握しておくことが必要です。ただし、すべての知的資産が社員の退職によって影響を受けるものではありません。例えば、会社の文化、協力会社との関係、ブランドなどは、社員が退職したからといって失われるものではありません。

 社員の退職によって影響を受けるのは、知的資産の中でも人的資産です。これは、人に張り付いたもののことです。

 例えば、第一種電気工事士などの資格は属人的なものであり、会社に資格が与えられたのではありません。それは、会社の経費で資格を取った場合であっても、です。資格所持者がいなくなれば、会社としての仕事ができなくなってしまいます。つまり、営業停止ですね。

 資格なら、複数の社員に試験を受けさせれば、そのうちの何人かは合格できるかもしれません。ところが、職人技や人をまとめる等の能力で、同業他社と差別化を図っていた会社はどうでしょう。これらの能力は、一長一短で身につくものではありません。

 また、人はいつか去りゆくものです。とすれば、人的資産の承継を早目に計画することが大事になってきます。つまり、誰が、度の先輩の人的資産を引き継ぐのかを決めるべきなのです。

 まずは、社員の退職によって、何が失われてしまうのかを書き出してみることです。そのうえで、誰に、どのような方法で、どれだけの時間をかけて承継していくかを決めます。

 知的資産のバトンタッチを、どのようなタイミングで行うか検討してみましょう。事業承継をしなければならないものの中には、可視化しにくいものもあるのです。

 会社にとって大切な知的資産。失ってから慌てないようにしたいものです。

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