第52話 書面化されない約束とは?

 「裏切られた」

 会社と社員との関係で、このように感じることはままあることです。社員が、「裏切られた」と感じた場合、パフォーマンスが低下し、会社の生産性を下げたり、会社に対して敵対心を持ち、トラブルに発展することがあります。

 例えば、契約=約束が守られないという場面で「裏切り」を感じることがあります。契約は、今でこそ書類で交わすことが当たり前になっていますが、昭和の時代はそうではありませんでした。

 この時代は、特に契約書を交わすでもなく、終身雇用が保障されていました。終身雇用について、OECDが三種の神器と褒めそやしたことを覚えていらっしゃる方もみえるのではないでしょうか。

 このような背景から、社員にも長期に安定した雇用を保障されるという期待があったことになります。しかし、ここ数年、終身雇用が崩壊したと言われています。確かに、一つの会社で勤めあげるという意識は希薄になり、労働移動が当たり前のように行われるようになりました。

 また、正社員が減って、非正社員が3割を超えるようになりました。すると、暗黙の約束であった終身雇用が守られなくなっても、社員が「会社に裏切られた」とは感じられなくなったと言えるのでしょうか。

 これは、国の取り組みを見ると分かります。例えば、昨年4月の労働契約法の改正です。雇用を安定させるために、有期契約の非正社員に対し、無期契約への転換権が盛り込まれました。

 このことからも、社員が雇用の安定を望んでいることは間違いありません。加えて、会社が雇用を維持できない理由を、外部環境である経済情勢の変化にしやすいことも影響しているでしょう。

 社員に「裏切られた」と感じられないようにするためには、契約の明確化が欠かせません。もちろん、すべての契約を記載することはできませんし、将来を予測するにしても限界があります。つまり、契約は不完全なものであると言えます。

 しかし、契約内容が不明確で将来もわからないような状態ですと不安ばかりが募ることになります。すると、冒頭でお伝えしたように、生産性が下がったり、トラブルが起こってしまいます。

 なので、終身雇用のように、過去からの慣習による期待、すなわち書面化されない約束があることも理解したうえで、できる限り契約を明確化することになります。

 特に、従来までの約束が変わったとか、組織に変化が起こった場合には、社員に対し、新たな契約を提示することが必要です。そのためには、トップが社員に対してメッセージを発信できるメディアを持つことが重要になります。

 今、時代は約束を守る時代になったのです。

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