第50話 非正規社員の責任感を醸成するには?
「迫力があってよかったですね」
先日、知人が所属するオーケストラの演奏会にご一緒した方の第一声です。この時期には、めずらしくベートヴェンの第九の演奏会でした。合唱付きでしたので、それはそれは迫力のあるものでした。
オーケストラですから、様々な楽器が組織的に演奏します。その中にあっても、曲の途中で、特定の楽器の演奏者が主旋律を奏でるパートがあります。このときばかりは、演奏者にとっての”晴れ舞台”ですし、見せ場でもあります。
つまり、演奏会に来ている人、みんなに注目されるわけです。ここで、ミスをすれば他の楽器と一緒に演奏しているときよりもはるかに目立ってしまいます。したがって、晴れの舞台に立つ前の練習にも力を入れることになります。また、ソロのパートだけではなく、全体の演奏で足を引っ張ってはいけないとも思うでしょう。
これを仕事に生かせないでしょうか。
よく問題になるのが非正規社員であるパートタイマー。例えば、デパートやスーパーなど、パートタイマーが基幹社員であるところは、それほど問題にはなりません。ところが、製造業など、正社員が基幹社員のところでは、パートタイマーに責任感がないと嘆く社長は多いものです。
確かに、正社員の中のパートタイマーという位置づけでは、責任感も芽生えにくいことでしょう。そもそも、賃金が違いますから責任感を持てということの方が無謀なのかもしれません。
しかし、前述したように、晴れの舞台、すなわち、みんなに見てもらう機会を作ることで責任感を醸成することができるようになります。例えば、「仕事に対するこだわり」「仕事をするうえで心掛けていること」「今後の仕事の目標」などを開示することです。この中で、創意工夫や失敗した経験から得られた教訓など、できる限りプラス面を出すことがポイントです。
つまり、自分の仕事ぶりを第三者に対して「見える化」するということになります。当然、見てくれる人がいなければいけませんが、晴れ舞台の演出もしやすくなるでしょう。
第三者に自分の仕事ぶりを見られるということは、良い評判を得られるかもしれませんし、その逆もあります。パートタイマーが、良い評判を得られるよう、自ら取り組むことで、会社全体の成果を押し上げます。会社がパートタイマーに対して、晴れの舞台を用意することは意義のあることです。
今回、「第九」を聴きながら協働について考えさせられました。ところで、楽器に疎い私は、知人のソロパートがどこだか分かりませんでした。予め、教えてもらっておければ良かったですね。