第43話 チャンスを渡すとはどういうことなのか?

 「注意しても言うことを聞かない」

 このような社員がいると、業務に支障が出たり、他の社員へ悪影響を及ぼすことが懸念されます。雇い続けることによって、そのリスクが高まるであろうことは容易に想像できます。したがって、一刻も早く辞めてもらおうと考えるのは当然のことです。

 ところが、我が国では、ひとたび雇い入れたら、指導・教育を行って会社が面倒をみるべきだという考え方があります。つまり、会社には教育訂正機能があることになります。

 これは、あらゆる手をつくして指導・教育したけれど、改善できなかったという事実の積み上げが必要になるということです。言い換えれば、問題点を特定して、それに関する改善チャンスを社員に渡すということになります。

 例えば、営業でなかなか成果の出せない社員がいたとします。そこで、仕事を取り上げて干してしまうと、改善チャンスを与えていないことになります。

 改善チャンスを渡すということは、なぜ成果が出ないのかという問題点を特定し、必要に応じて支援することです。

 徹底した支援をすることで、これだけ支援しても成果が上がらなかったという事実が大事になるのです。そうでないと、会社に支援してもらえなかったから成果が出せなかったという口実を与えかねません。

 改善チャンスのカタチは様々です。

 例えば、休職も改善チャンスととらえることができます。健康で働くということを労働契約の内容として約束しています。ところが、病気で働くことができなくなると、この約束を守ることもできなくなってしまいます。そうなれば、契約の解消、すなわち解雇になります。

 しかし、それを一旦猶予して、休職に入れることは、すなわち改善チャンスを渡すということです。それでも治らず、休職期間が満了すれば、改善チャンスを渡したけれど改善できなかったということになるのです。

 このように、問題を特定することによって、様々な改善チャンスがあります。改善チャンスを渡すときに重要なのが記録を残すということです。

 例えば、日常の注意や指導であれば、その内容を具体的に書面で残すことになります。その内容を問題の社員にも確認させて、サインさせるのが良いでしょう。

 サインを拒否された場合は、改善する気がないと受け取ることができます。また、なぜサインできないのかを聞いたうえで、記録として残しておきます。

 ただし、書面を乱発すれば良いというものでもありません。あくまでも記録の内容が大事であり、問題点を改善する努力をしていることが客観的に評価されなければなりません。

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