第41話 何がパワハラになるのか?
「上司の暴言が原因で仕事ができなくなって退職を余儀なくされた」
元社員から、このように主張されて法外な金額を要求された会社があります。
パワハラは、セクハラと違って法的概念はありません。しかし、暴言はダメです。「クビ」とか、「死ね」とか、「バカ」など一般社会の常識の範囲を超える言動はいけません。
今、職場のパワハラが、社会問題となっています。
厚生労働者が公表した「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況報告」によると、相談内容で一番多かったのが「いじめ・嫌がらせ」です。平成13年の施行以来ずっとトップだった「解雇」に取ってかわったのが「いじめ・嫌がらせ」なのです。「いじめ・嫌がらせ」は、ハラスメント対策として早急に手を打たなければなりません。
そこで、この問題を考える時にハラスメントの語源を知っておくと良いでしょう。語源を調べていたら、ピッタリくるものがありましたので以下に引用します。
原語の意味は、「深い、極端な疲労」である。
もとの動詞はharasserで、これは猟犬をけしかけるときの叫び声haraceから作られた言葉である。
原義は「猟犬をけしかけること」。
つまりハラスメントとは、本来は猟犬に追われた獲物が感じるであろう絶望的な疲労感を指すのである。
だから、「ハラスメント」は広義には「強者が弱者を」「傷つけ、いたぶるために」「執拗に攻撃すること」を意味する、とあります。(内田樹『子どもは判ってくれない』洋泉社、2003年)
この中で、「執拗に攻撃すること」とありますが、執拗というのは「うるさいほど、しつこい」という意味ですね。
例えば、褒められたり、感謝されたりされれば、うれしいものです。しかし、「うるさいほど、しつこく」褒められたり、感謝されたりしたら、どのように感じるでしょうか。
逆に言えば、うれしい言葉がけであったとしても、度を過ぎれば「いじめ・嫌がらせ」に変質してしまうということです。例え、「傷つけ、いたぶるために」という意思がなくても、相手にとっては「いじめ・嫌がらせ」と受け取られてしまうでしょう。
なので、相手にとって喜ばれる言動であっても、言い過ぎていないかをチェックすることが必要です。
また、パワーについては、労働契約が指揮命令=パワーによって成り立っていますから特に注意が必要です。とはいえ、指揮命令や企業秩序に違反したりすれば、注意指導をするのは当たり前です。場合によっては、強い叱責もしなければなりません。
ただし、パワーの濫用になっていないかのチェックを怠ってはダメですよ。