第40話 どうして初動が大事なのか?
「もっと早く辞任すべきだった」
猪瀬東京都知事の辞職表明を受けて、都の職員が漏らした言葉です。あちこちから同じようなコメントが寄せられていました。
また、発売日が辞職の日と重なった『勝ち抜く力』は、何とも皮肉なタイトルになってしまいましたね。辞職は時間の問題だったのでしょうが、とことん追い詰められてからの辞職ですから、受けるダメージも大きなものでしょう。
これと同じように、物事は、深刻化する前に手を打った方が良いです。もっと言えば、初動をどうするか、です。例えば、火事は、初期消火によって延焼を防ぐことができます。火がくすぶっているうちは、消しやすいですよね。
労務管理についても同様のことがいえます。
例えば、会社と社員の間でトラブルになるケースで考えてみましょう。トラブルになりかけた時に、最初の対応がうまくできれば大事には至りません。つまり、社内だけで解決することができます。労使自治の原則がありますから、これが本来のあるべき姿といえます。
ところが、初動をミスった場合は、互いの感情が対立してしまって取り返しのつかない問題に発展してしまいがちです。実際にトラブルになったケースでは、上司に頭ごなしに言われた社員が第三者に相談しています。
第三者というは、弁護士や司法書士、労働基準監督署あるいは合同労組などです。彼らに介入されると、問題が深刻化して、自分たちだけでは解決できなくなってしまいます。この状況に至っては、社員と密なコミュニケーションを取ることはほぼ無理です。
また、部外者に介入されることで、費用や時間が余計に掛かります。加えて、様々なトラブルがありますから、複雑な対応を強いられることにもなるでしょう。すると、自分たちだけでは手に負えなくなってしまいます。
したがって、これを避けるには、初動に力を注ぐことが大事になります。逆に言えば、問題の終結を見据えた初動を取るということです。
初動を取りやすくするためには、例えば、相談窓口を設置しておき、気軽に相談できるようにすることも有効です。相談してくれさえすれば、対応策も検討できるようになります。
早目に相談を促して、問題を放置しないことが重要です。放っておいて時が解決してくれるということはありません。
トラブルの芽が大きくならないうちに摘み取れる環境をつくることが必要です。