第37話 総メディア時代のリスク回避策とは?

 「会社の大事な情報が、ライバル会社に漏れてしまった」

 これが、会社経営の根幹を揺るがすことになるかもしれません。

 例えば、ライバル会社に先駆けて秘密で開発していた商品があるとしましょう。それを社員が漏えいさせてしまった。しかも、その社員に悪意はなく、仕事を家に持ち帰った時に、不注意で社外の人がアクセスできるところへ情報をあげてしまったとしたら。

 そのことによって、本来、自社が売り出す商品をライバル会社が先んじて商品化してしまったら大きな痛手となります。

 このような情報のことを営業秘密と言います。具体的には、①秘密として管理されていること、②有用な情報であること、③公然と知られていないことの3要件を満たす技術上、営業上の情報を指します。

 冒頭の例の場合は、秘密裏に開発してきた努力がすべて水泡に帰すことになります。まず、ここで問われるのは、会社が営業秘密をどのように管理していたかということです。例えば、アクセス制限を設けているかとか、就業規則に秘密保持の規定を設けているかなどの適切な管理が求められます。

 このケースでは、自宅からもアップロードできる状態だったので、会社の管理が甘すぎたということになります。

 では、この時、社員に対して、どのような処分を科すことができるのでしょうか。

 悪気がないとはいえ、会社を危機的状況に追い込んだのですから何も処分をしないということはできません。しかし、懲戒解雇ができるかと言えば、会社の管理も甘かったわけですから難しいでしょう。全ての責任を社員だけに押し付けることは無理です。

 漏えいに対するリスク回避の体制が取られていないことで、社員に過失はあるものの損害賠償額の減額は避けられません。加えて、自社の情報を利用してライバル会社が商品化したとしても、法的手段は取れません。社外の人が閲覧できる状態にしてしまった時点で、前述の①と③の要件を欠きますので営業秘密ではありません。会社にとっては踏んだり蹴ったりです。

 このような事態を避けるためには、営業秘密の管理方法を徹底することが必要です。例えば、仕事を家に持ち帰らせないとか、会社が管理している端末からでないとアクセスできないとかのルールを決めて教育することです。

 せっかく、ルールを決めても社員がその内容を知らなければ守ることはできません。なので、決めたルールを守れるように、しっかりと教育することが大事なのです。

 現代は、誰もがメディアになれる時代です。時代に応じた対応ができないと、会社が被るリスクは計り知れません。

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