第34話 あきらめないことの大切さとは?

 「明けない夜は長い」

 シェイクスピアの『マクベス』のせりふですね。誰しも問題を抱えた時、解決の糸口が見つからないと、このせりふのように前途が混沌としてくるのではないでしょうか。いつまでも、出口が見えない状況が続くのではないかと不安ばかりが募るかもしれません。

 しかし、物事には必ず終わりがあります。労働紛争のあっせんの現場で、そのことを肌で感じることがあります。

 あっせんというのは、紛争を解決する手段の一つです。この制度は、裁判のようにガチガチの証拠で固めたり、証人に話を聞いたりするものではありません。つまり、法的な解決ではなく、労使双方の話をよく聞いて落としどころを探るということになります。

 トラブルに至るまでには、いくつもの行き違いが双方にあって、時間の経過とともにのっぴきならない状況になってしまいます。言い換えれば、コミュニケーション不全に陥るということです。

 先日も、解雇についての話し合いが持たれました。双方に、それぞれの言い分があります。会社側は元社員によかれと思ってしたことだと言い、元社員側は会社の嫌がらせだという主張です。

 お互いに、相手がどう出てくるのか腹の中は分かりません。部屋の中は、空気がピーンと張りつめているのが分かります。その中で、解決の糸口を見つけるために、双方の妥協点を探っていかなければなりません。解決のためには、双方ともに、正しいことも、そうでないことも、ひっくるめて受け入れてもらう必要があります。

 この時は、契約を解消して金銭で解決することになりました。しかし、双方の提示する金額にかい離があって、なかなかまとまりません。冒頭のせりふどおり、不安に苛まれます。

 そんな中、元社員側から訴訟もやむを得ないという発言が出ました。このまま、まとまらない話を続けてもらちがあきません。その場合は、話し合いを打ち切ることになります。

 いよいよ打ち切りもやむを得ないかと思われた時に、妥協点を見出し、解決することができました。その瞬間、緊張が解けたのか社長の口から本音がポツリ。「自分の気持ちとしては一銭も払いたくない。だけど、会社としては早く解決できて良かった」。また、元社員も安堵の表情を浮かべていました。

 いつ頃から両者の歯車が狂いだしたのか、なぜこんな事態になってしまったのか。モヤモヤした気持ちが、やがて嫌悪に変わっていったのでしょう。双方の話し方や、話す内容から、そのように感じられました。話をよく聞いてあげることで、感情も何もかもひっくるめて、こちらの提案を受け入れることができたのだと思います。

 人の話をよく聞くという行為は、話し手に「自分の話を聞いてくれた」という満足感を少なからずもたらすのでしょう。今回の当事者も、普段からお互いの話に耳を傾けていたら、あっせんをするまでに溝は深まらなかったに違いありません。

 何事もあきらめないことですね。

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