第32話 終わりよければ…とするためには?
「会社をぎゃふんと言わせたい」
会社を辞めた社員の言葉です。例えば、「10年以上も勤めてきたのに、ぞんざいな扱いをされた」とか「上司や同僚にハラスメントを受けた」などといったマイナスの感情を社員に持たれることがあります。
感情そのままに辞められると、トラブルになるリスクが高まります。というのも、社員が退職することで、入社前の不確実な関係に戻るからです。つまり、相手が自分の利益だけを考えて行動できる状態になります。
そして、中には「ぎゃふんと言わせる」行動を実際に起こす人も出てきます。例えば、未払残業代の問題がそうです。この問題の中心となるのは、圧倒的に退職者です。在職中に我慢して蓄積してきた不満が、一挙に爆発するといったところでしょうか。
そして、会社にとっては、突然、内容証明などが送り付けられてきて多額の請求をされることになります。その時に、慌てて対策を取ったとしても、会社は無傷では済みません。既に、リスクが発生しているからです。
話し合いの場に引っ張り出される時間的なロス。解決するために利益が削られてしまう金銭的なロス等々。これらは、時間を掛けたから、あるいはお金を支払ったからといって生産性を向上させるものではありません。
また、一人の退職者にしたことでも、他の社員は会社の取った行動を見ています。つまり、会社にいる社員、退職者、今後入社してくるであろう社員に対しても同様のことをしなければならない可能性があります。会社にとっては、甚大なリスクとなる可能性があるのです。
このことから、社員が退職する時にマイナスの感情を持たせないことが重要であると理解できます。人は、入社したら、例外なく退職します。いくら優秀な社員でも、いくら会社が居て欲しいと望んだとしても、いくら得意先から請われたとしても100%辞めるのです。
多種多様な人間が集まる会社では、社員にとって、いいことばかりではなく、自分の意に沿わないこともあるでしょう。不満やストレスをためることもあるでしょう。それをいかに、退職前に緩和できるかがポイントになってきます。
今や非正社員が、全体の3割を超える時代となりました。これは、短期の契約が繰り返されることに外なりません。逆に言えば、契約の度に約束が守られないと不満が蓄積されてしまうことになってしまいます。
それを防ぐためには、まず、社員との間で守れる約束をすることが大切です。そして、かつて正社員が殆どを占めていた昭和の時代のように、終わりよければ全てよしという状況を作り出すことができればリスク回避ができるようになります。