第15話 労災リスクを減らすには?

 「若い頃は、よく徹夜したものだ」

 年配の経営者の方が、昔を懐かしむようにおっしゃいます。続けて「滅私奉公でサービス残業なんて当たり前だったな」。

 確かに、今と昔では働き方が様変わりしてしまいました。とにかく変化のスピードが速い。国民は、いつでもどこでも充実したサービスを享受できるようになりました。しかし、その裏では、24時間眠らない街で深夜に働く人がいて、物流が絶えず動いています。また、マーケットのグローバル化に伴い、地球の裏側の時間に合わせて対応することもあります。言い換えれば、国民そのものに心理的負荷が掛かる時代となったのです。

 それを象徴するのが、毎年、厚生労働省が公表している「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」です。中でも注目すべきは、過労死の原因とされる脳・心臓疾患の時間外労働時間数別の支給決定件数が、80時間以上で一気に跳ね上がっていることです。これは例年、同様の傾向にあります。

 一方、精神障害の場合には、どの時間帯もまんべんなく支給決定されているイメージです。一般に、過労死は50 歳代が最も多く、40 歳代、60 歳代と続きます。精神障害は、30 歳代、20 歳代、40 歳代の順です。このことから、中高年が無理をせずに働き続けられるような労働時間管理を行うことが望まれます。若いからといって、長時間労働を続ければ、精神障害になるリスク、あるいは中高年になった後に過労死のリスクが高まることになります。このように、病気は職場から派生する危険性を内在しているのです。

 でも、現実問題として顧客がいる以上、労働時間を減らすことは簡単ではありません。また、仕事の質を変えることも一筋縄ではいかないでしょう。加えて、疲れがたまって心身ともに余裕がなくなれば社員のモチベーションも低下します。

 そこで、活用したいのが年次有給休暇です。特に長時間労働に陥っている人だけを選び、マル1日休んでリフレッシュしてもらう。つまり、この休暇を使って、長時間労働がずっと続いている状態を一度、断ち切るのです。このように、年次有給休暇の取得は労働時間を減らし、疲れた身体をリセットできることから健康面でプラスに働きます。長時間労働が続いている人は、普段、年次有給休暇を使っていないでしょうから、一石三鳥ということになりますね。

 労災ともなれば、民事損害賠償を請求されるリスクをも考慮しなければなりません。労働時間を削減するためにはトップの決断が必要です。

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