第13話 ルールを知らせることの重要性とは?

 「2週間後に辞めさせていただきます」

 ある日、突然、今まで真面目に働いていた正社員から辞職したいと告げられました。上司はビックリして「急すぎるよ。いくら何でも引継ができないじゃないか」と声を絞り出すのがやっとでした。結局、「法律で定められているじゃないですか」と反論され、2週間後に辞めてしまいました。大変な思いをしたのが後に残された社員たちです。その影響は、半年以上経った今でも残っていると言います。

 この会社には、就業規則があります。それによると「退職を希望する場合は30日以上前に届出る」となっています。

 とすると、法律と就業規則のどちらを優先すべきでしょうか。

 答えは、法律か就業規則のいずれか有利な方ということになります。つまり、社員にとって早く契約解消できる方が適用されるということです。ただし、正社員のような月給者の場合、冒頭の例のように2週間で労働契約は消滅しません。2週間で契約が消滅するのは、時給者や日給者で契約期間の定めがない社員です。なので、正社員の場合、給与計算期間の前半に「辞めたい」と言えば、その計算期間の終了日に辞められます。

 また、後半に「辞めたい」と言えば、次の計算期間の終了日に辞めることができます。例えば、給与計算期間が、1日から末日の会社で考えてみましょう。6月12日に「辞める」と言えば6月30日が退職日となり、6月21日なら7月31日が退職日となります。すると、原則として、前半の場合は法律を、後半の場合は就業規則を適用するということになります。もちろん、会社としては退職を拒むことはできませんが、冒頭の社員の主張を認める必要はなかったのです。

 今回のケースでは、就業規則の内容を会社も社員も知らなかったことが問題です。会社と社員との間には、労働契約が結ばれています。この契約は、商取引と同様、合意によって成り立ちます。

 一方、就業規則は服務規律ですから、会社が一方的に作るものです。この一点だけをとらえても合意ではありませんから、契約内容とはなりません。ただし、服務規律の他に、給与計算などの労働条件も定めるよう、法律で決まっています。

 労働条件は、契約内容です。なので合意できるし、実際に就業規則の内容を合意しています。その手法が、入社時に誓約書で「就業規則を守る」と誓わせる慣行です。したがって、就業規則へは、辞職とは別に、話し合いで退職する際の定めをしておくことで契約内容にできます。これを周知しておけば、残された社員が嫌な思いをしなくても済んだことでしょう。

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