第3話 事前準備が大事なわけとは?

 「私たちのことは、まったく考えてもらえないんですね」

 経営者の方が、激しく叩きつけるようにいいました。私が、今月施行された改正労働契約法の趣旨説明を終えた直後のこの発言。経営者の本音だと思います。

 今回の改正の狙いは、正社員と非正社員との待遇格差を是正するための足掛かりだと考えられます。正社員と非正社員を比べた場合、一般的には正社員の方が雇用は安定していると思われているでしょうし、待遇も高いと思われているのではないでしょうか。また、非正社員の中でも、期間の定めがない人と、期間の定めがある人では、どちらが契約解消しやすいと思われるのでしょうか。一般的には、期間の定めのない方が難しいと思われています。法では、期間の定めのある方が、定めた期間内を保護しているにも関わらず、です。これが、多くの人のイメージするところです。

 このような認識に立てば、今回の改正は非正社員が雇用の不安を抱えることなく働けるようにしようとしたことがわかります。それが、有期契約から無期契約への流れです。これは、有期契約が、同一の会社で5年を超えて反復更新された場合に、無期契約に転換する申込みができるというものです。

 そこで、割を食ったのが経営者。契約書があるから期間がきたら終われると思っていたのに、通算5年を超えて契約を更新したら無期契約に転換されてしまう可能性が出てきました。それでも、雇っているすべての有期労働者が、無期契約に転換しても構わなければ問題はありません。しかし、実情はそうではないハズです。例えば、いい人が見つかるまでと思って、間に合わせに仕方なく更新を繰り返してきた人であっても、無期契約の転換の要件を満たせば、会社はそれを受入れなければならないのです。加えて、期間の定めがあることを理由とした不合理な労働条件を設けることも禁止されました。

 この対策の一つとして、無期契約に対応した就業規則を作ることになります。従来、非正社員に対して、無期契約という概念はあまりありませんでした。なので、例えば、パートタイマーなら、有期パートタイマーと無期パートタイマーのように契約形態を二分します。

 今後、「通勤手当」が不合理な労働条件とされる可能性があります。例えば、有期労働者には通勤手当を支払って、無期労働者には支払わないとします。すると、不合理の議論に巻き込まれてしまいます。そこで、正社員の就業規則には通勤手当を支払うと定め、有期と無期のパートタイマーの就業規則には通勤手当を支払わないと定めます。このようにすれば、有期、無期に関わらず雇用形態において差があることになりますからクリアできます。

 無期契約の転換は、年を追うごとに取りざたされることになります。法に対処するには、この話題が沸騰する前に準備をしておくことが大事です。

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