第2話 約束が大事なわけとは?

 「今月末で辞めます」

 社員から唐突に切り出されたら会社は困ってしまいます。加えて、今まで取れなかった分の年次有給休暇を消化したいと言われれば引継もできません。そうなると、クレームが入るかもしれませんし、仕事がまわらなくなってしまうかもしれません。お客さんや同僚に及ぼす影響は少なくないのです。このように、社員が自分の利益ばかりを主張したとすれば、会社はたちまち窮地に陥ってしまいます。

 契約を解消する場面では、一方が自分の利益ばかりを優先すると、もう片方は危険にさらされてしまうという状態になりやすいのです。それは、これから先、信頼関係を維持しなくても良いからに外なりません。

 他方、在職中はどうかといえば、会社も社員もお互い、相手が無茶なことはしないだろうと期待しています。これが、相互に信頼している状態です。この状況を維持していかないと、会社として十分な成果を得ることはできません。

 現在は、雇用の流動性が高い時代です。したがって、応募して社員になる人は、会社にとって未知の人が殆どということになります。彼らをいちいち疑っていては、切りがありません。なので、お互い、約束を守ることが共通のルールとなります。約束は、契約によって成されます。その契約は、合意によって成り立ちます。ただし、契約内容が不合理であっても、合意すれば契約できることになります。不合理とは、世間的にみて、ちょっと理屈にあっていないなということです。例えば、友達のしている腕時計が気に入ったとしましょう。その腕時計を譲って欲しいと頼んだら、目ン玉が飛び出すくらいの金額を吹っ掛けられました。でも、のどから手が出るくらい欲しかったのなら、お金を工面してでも買いますよね。これで、商取引の契約成立です。

 労働契約も同じなのです。

 このような一方にとって不合理な状態は、採用の場面でも起こりやすいです。応募者は契約が自分にとって不利な内容でも、ウンと言わないと採用してもらえないからです。しかし、会社と社員の利益バランスが取れていない約束というのは、早晩、守れない約束になってしまいます。約束が守られないというのは、相手が無茶なことはしないだろうと期待することができない状態です。つまり、信頼関係が崩壊しているということです。したがって、会社は合理的なルールを用意して、その内容を教え、お互いが守り、守られるという関係を築くことが大事なのです。

 時代は、フェアプレーが求められています。

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